きのう、、、

炎天下で時間の止まってしまったような日中のフラワー通り。トラックに荷を積む音が響きわたり外にでてみると、とても好きだったお宅の解体作業が始まっていました。通りの路地を少し入った空間に外壁もなくひっそりと横長に建てられた住宅で、主のいなくなった後には、杉の板戸がしっかりと家を守っているように見えました。時々、ふらっと路地に入ってこの家の佇まいを眺めては、杉戸に触れてみたりして住んでいらした方のことなどを思い出したりしていたのです。ご挨拶ばかりの会話を交わしていただけのおひとり住まいの家主さんでしたが、笑顔のやさしい方でした。丁寧に暮らされているご様子がじんわりと伝わってくる方でしたので、一年ほど前に亡くなられたことを聞いたときからは建物の行方が気になっていたのです。出来ることなら引き受けたいとも思いました。この春には偶然にも落語会がきっかけで娘さんとお会いする事ができましたので、思い切って聞いてみましたら、もうすでに売却先が決まってしまったとの事でした。それから数ヶ月が経ち、一週間ほど前に建物にはパイプの足場が組まれて、杉戸が開け放たれて中の様子を見ることができたのです。縁側を覆っていた杉戸が正面の神棚までもしっかり守っていたように感じました。そしてきのう、、、解体作業の人たちが数人で、路地からどんどんと建具を運び出して、ガラスの入った建具はガシャガシャと音を立てながら粉粉にされて2台のトラックに木とガラスが分別されて積まれていきます。こんな音を聞きながら数分でしたが、今なら間に合う、、、と心に言い聞かせやっとの気持ちで壊される前の建具を2枚救いだせました。解体作業の方たちもやさしい気持ちで作業途中に2枚の建具を手渡してくださりその後の作業は続けられていったのですが、しっかりと息づいていた建具たちはもう使われることもなく壊されているかと思うと、無力な怒りの涙があふれてきます。今はただ、作業員の方たちのやさしさが空しさの中の救いのように思われて。杉戸はトラックに運ばれてまでも、トラックの荷台の両脇で平積みされた建具を守っているかのように積まれていきました。

※写真撮影:独歩/doppo

 

浦安の小さなギャラリー どんぐりころころ
〒279-0041千葉県浦安市堀江フラワー通り3-2-10 tel/fax 047-352-0778
e-mail : donkoro♠jcom.home.ne.jp (♠ を @ に変えて送信してください。)

ページトップへ戻る